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個人事業主のインボイス制度対策|課税事業者になったほうがいい?

公開日:2022.07.20

個人事業主のインボイス制度対策|課税事業者になったほうがいい?

こんにちは。リコーリース集金代行サービスライターチームです。

2023年10月1日から「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」が開始されます。個人事業主の多くは制度の開始に不安を持っているのではないでしょうか。インボイス制度によって、具体的にどんな変化があるのかよくわからないという声も少なくありません。そのため、対策を取りあぐねている人も多いでしょう。そこで、今回は個人事業者向けにインボイス制度対策について解説します。

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1.インボイス制度とは

通称「インボイス制度」とは、適格請求書(インボイス)の発行あるいは保存によって、消費税の仕入税額控除が受けられる制度です。正式名称は「適格請求書等保存方式」です。制度が開始する2023年10月からは、適格請求書発行事業者が作成した適格請求書の保存が、仕入税額控除を受けるための要件となります。

制度の目的は消費税の正確な把握にあります。日本では2019年10月に消費税率が10%になりました。それと同じくして、消費税の軽減税率制度がスタートしたため、食料品などの生活必需品については消費税率が8%に据え置かれています。事業者にとっては消費税率が2種類あることで、その経理処理が複雑になり、正確な消費税の納付が難しくなっていました。そこで、適格請求書発行事業者に適格請求書を発行させることで、仕入税額控除と消費税納付の適切性を担保しました。また、この制度の導入によって、商品ごとに適用税率とその税額が明らかになるため、消費税にかかわる不正やミスを防止する効果が期待できます。

制度の核となる適格請求書とはどのような書類なのでしょうか。適格請求書とは、取り扱ったサービスや商品ごとに消費税の税率や額面を記載することで、正確な適用税率と消費税額を、売手が買手に伝えるための書類です。事業者が仕入れや経費から消費税を控除(仕入税額控除)するためには、取引相手の事業者登録番号が記載された適格請求書が必要です。しかし、適格請求書の交付は誰もができるわけではありません。事業者登録番号が記載された適格請求書を発行するには、消費税の課税事業者となって、適格請求書発行事業者として登録しなければなりません。

適格請求書に記載されるべき事項は次の通りです。まず「発行者の氏名又は名称」と「事業者登録番号」の表記が必要です。次に「取引内容」と「取引年月日」および「受領者の氏名または名称」の記載が求められます。「適用税率」と「適用税率ごとに区分した合計額」を明記し「適用税率ごとの消費税額の合計」を記します。軽減税率適用の場合には「軽減税率の対象である旨の表記」が必要です。適格請求書発行事業者は、一定の場合を除き、取引の相手方の求めに応じて適格請求書を交付し、交付した適格請求書のコピーを証拠資料として保存する義務があります。

なお、適格請求書の保存義務が生じる期間は、受取側・発行側ともに7年間です。紙での保存が原則ですが、要件を満たせばデジタル情報での保存もできます。

2.今までの制度との違い

インボイス制度は従来の区分記載請求書等保存方式とどのような点で違いがあるのでしょうか。インボイス制度の開始によって、以下の3つの項目で区分記載請求書等保存方式との違いが生まれました。

1つ目は「適格請求書(インボイス)の発行」についての違いです。現行の制度では適格請求書の交付義務はなく、適格請求書発行事業者以外が交付したとしても、罰則はありません。インボイス制度が開始する2023年10月以降は、適格請求書の交付と保存が義務になります。交付は登録された適格請求書発行事業者のみ発行可能となり、不正交付には罰則が適用されます。

特に、罰則には注意が必要です。適格請求書発行事業者の登録を受けていない業者による適格請求書の交付だけでなく、新消費税法第57条の5によってインボイス類似書類の交付が禁止されるからです。もし、適格請求書等と誤認される書類交付した場合には、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。取引相手が適格請求書発行事業者であるかどうかは、国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」から確認できます。サイトの利用は2021年11月1日から可能です。

2つ目は「仕入税額控除の要件」が異なります。現行の区分記載請求書等保存方式では、帳簿および請求書の保存が仕入税額控除の要件となっています。さらに、免税事業者から仕入れた商品やサービスであっても仕入税額控除が可能でした。加えて、税込み3万円未満の商品やサービスであれば、請求書などがなくとも、帳簿への記載があれば仕入税額控除ができます。しかし、インボイス制度導入後は、仕入税額控除に帳簿と適格請求書の保存が必要になるだけでなく、税込み3万円未満の商品やサービスであっても、適格請求書を保存しなければなりません。

また、免税事業者から仕入れた商品やサービスの消費税は、仕入税額控除の対象にならないので注意が必要です。この変化によって企業の支払い負担が増えるので、企業は免税事業者との取引を避けるようになると考えられています。

消費税課税事業者として登録を済ませた企業が免税事業者から税込価格33,000円(消費税10%)の商品を購入したケースを例に考えてみましょう。企業はその商品を消費者に税込価格55,000円(消費税10%)で売った場合、従来方式では、企業が納めるべき消費税は「5,000円-3,000円=2,000円」です。ですが、インボイス制度導入後は免税事業者からの仕入れに支払った消費税は、仕入税額控除ができません。その結果、企業が納めるべき消費税の額面は5,000円となります。

このように、免税事業者との取引は結果として企業負担を増やすことになります。現在仕入れ先となっている個人事業主は注意が必要です。適格請求書発行事業者として登録せずに免税事業者のままでいると、取引先が少なくなるかもしれません。

3つ目は「税額計算」における違いです。従来方式では、取引総額を税率ごとに区分し、それに対して消費税率を乗じて納付すべき消費税額を計算する「割戻し計算方式」を原則としています。さらに、取引ごとの消費税額を合算していく「積上げ計算方式」を選ぶことも可能です。インボイス制度開始後も消費税額の計算にどちらの方式を使うのかは選択ができます。なお、売上税額において積上げ計算方式を選択した場合、あるいは積上げ計算方式と割戻し計算方式を併用した場合は、仕入税額の計算に積上げ計算方式を選択しなければなりません。

3.免税事業者はインボイス制度で不利になる?

「平成28年度 与党税制改正大綱 参考資料②-2(軽減税率制度関係参考資料)」によると、2015年の時点における課税事業者数は310万者でした。内訳は個人事業主が116万者、法人は195万社です。これに対して免税事業者は513万者。その内訳は個人事業主が435万者、法人が77万社となっています。つまり、日本の個人事業主551万者のうち435万者が免税事業者です。その割合は8割近くになるため、日本の個人事業主の大多数は免税事業者であると言えます。

インボイス制度が本格的に開始すると、大多数を占める免税事業者にどのようなことが起こるのでしょうか。インボイス制度の概要が明らかになった頃から、免税事業者は課税事業者から取引を避けられる可能性が高くなるのではないかと言われています。そうなると免税事業者の事業継続は難しくなるでしょう。インボイス制度によって免税事業者は本当に不利になるのでしょうか。以下で解説します。

免税事業者とは

免税事業者とは消費税の納付義務が免除されている事業者を指します。ですが、これは消費税の請求ができないという意味ではありません。免税事業者であっても、商品やサービスを提供した際には、消費者に対して消費税を請求できます。預かった消費税は納付の必要がなく「益税」として事業主の利益となります。

免税事業者となるためには、基準期間における課税売上高が1,000万円以下でなければなりません。基準期間は前々年の1月1日から12月31日を指します。例えば、2021年(令和3年)分の確定申告なら、2019年(令和元年)の1月1日から12月31日までの期間です。法人の場合は前々年度の事業年度が基準期間となります。また、特定期間の課税売上および給与等支払額が1,000万円以下でなければなりません。特定期間とは、個人事業主の場合その事業年度の前年の1月1日から6月30日までの間を指します。法人ならば前事業年度の開始日から6カ月の期間です。

なお、設立から2年以内の事業者は基準期間がないため免税事業者として取り扱われます。ただし、資本金もしくは出資金が1,000 万円以上の場合は課税業者となります。

インボイス制度の導入にしたがって、免税事業者が課税事業者に転換すると、益税で得ていた利益を失うことになります。本来なら納付すべき消費税を益税とせずに適切に納税させるため、税負担の公平性を保つという意味においては、インボイス制度は確かに評価できるのかもしれません。しかし、元々収益が少ない免税事業者にとって益税は重要な収入源です。もし益税が失われてしまうと、免税事業者の資金繰りに影響がでる可能性は否定できません。

インボイス制度後の免税事業者の取引予想

インボイス制度が開始した後、免税事業者を継続した場合、取引はしづらくなるのでしょうか。この点について、公正取引委員会のウェブページ「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」に、財務省をはじめとする関係省庁の回答が記載されています。それによると、売上先が消費者又は免税事業者である場合や、売上先の事業者が簡易課税制度を適用している場合には、影響が生じないそうです。また、消費税が非課税となる医療関係などの商品やサービスを提供している事業者も、影響がでないと予想しています。

確かにこれらの場合、影響が生じることは少ないでしょう。消費者や免税事業者は仕入税額控除をしません。簡易課税制度を利用している事業者なら、適格請求書を保存せずとも仕入税額控除が可能です。消費税非課税ならい仕入税額控除をしないのも当然です。しかし、これは限られた条件下にある取引の場合、免税事業者に影響がでないと示しているだけにすぎません。取引相手の事業者が簡易課税制度を用いない課税事業者の場合は、経過措置の期間が過ぎると不利になる可能性が高いと言えるでしょう。

4.個人事業主は課税事業者になるべき?

インボイス制度の導入によって、すべての免税事業者が不利益を受けるとは限りません。ですが、多くの免税事業者にとって、インボイス制度が不利に働くのは間違いないでしょう。そのため、免税事業者から課税事業者に変更するべきか、慎重に判断するべきです。ここでは判断の一助となるように、個人事業主が課税事業者となることのメリット・デメリットについて解説します。

課税事業者になるメリット

インボイス制度で最も懸念されていることは、免税事業者のまま事業を続けると、仕入税額控除を利用したい事業者から取引を敬遠される可能性が高いということです。課税事業者となれば適格請求書発行事業者として登録ができるので、取引相手は仕入税額控除を使えるようになります。そのため、制度によって仕事が減少するということもなくなります。取引先に対してこれまでと同様に消費税を加算した請求することも可能です。これは、取引先の税務処理の負担を減らすことにもつながります。

これからインボイス制度が導入されると、取引先に免税事業者よりも課税事業者を選択する者が増えていきます。免税事業者のまま事業を続け、取引を打ち切られる事業者は数多く発生するでしょう。課税事業者になり、適格請求書発行事業者登録しておけば、免税事業者よりも優先して取引先に選ばれやすくなります。また、取引先の選択肢が相対的に増えるため、ビジネスチャンスの拡大も期待できます。

課税事業者になるデメリット

課税事業者になると益税の恩恵がなくなり、消費税の納付をしなければなりません。もし、売り上げがインボイス制度後も変わらないのであれば、消費税納付額の分だけ、所得が下がることになるでしょう。加えて、所得税納付の手間が増えるので経理業務が増えます。今まで必要としなかった業務が増えるのは、個人事業主にとっては非常につらいところです。なお、適格請求書は従前の請求書とは記載事項が異なります。そのため、新しい請求書のフォーマットを用意しなければなりません。

取引相手が簡易課税制度を選択している場合や経過措置の数年間は、課税事業者となっても、ただ消費税納付の義務と負担が増えるだけです。また、経過期間中は、免税事業者に対する明確な優位性や差別化もありません。課税事業者になることが即座に利益につながるとは断定できないので、変更には注意が必要です。

5.インボイス制度の今後の流れ

インボイス制度が完全施行されるまでには、段階的な経過措置が取られます。制度開始から各経過措置の終了後の完全施行まで、どのような流れになるのでしょうか。現時点での情報にはなりますが、その流れを確認しておきましょう。

インボイス制度の施行開始

インボイス制度の施行が開始されるのは2023年の10月1日からです。この日に合わせて課税事業者に変更したいのであれば、原則として2023年3月31日までに適格請求書発行事業者の登録申請をしておかなければなりません。なお、登録は2021年の10月1日から始まっています。申請方法は申請書を作成し国税庁に提出します。申請書は国税庁からダウンロード可能です。電子申請もできます。登録が済んだなら、継続的な取引先には登録番号や交付方法を通知しておくと良いでしょう。スムーズに適格申請書の交付ができるようになります。

インボイス制度の施行に合わせて、経過措置期間が用意されています。第1段階目の経過措置期間は2023年10月1日から2026年9月30日までの3年間です。この期間に課税事業者が免税事業者と取引した場合、その仕入税額相当額の80%まで控除されます。そのため、第1段階目の経過措置期間中は、免税事業者がインボイス制度で大きな影響を受けることはないでしょう。免税事業者である個人事業主は、この期間における取引相手の状況・事業の規模・利益などを総合的に判断して、課税事業者となるべきか決めると良いでしょう。

仕入税額控除割合80%終了

第1段階目の経過措置期間の終了後、2026年10月1日から2029年9月30日までは、第2段階目の経過措置期間です。この期間は、課税事業者が免税事業者と取引した場合、仕入税額控除が可能です。ただし、その割合は80%から50%に引き下げられています。控除できない額面が大きくなるので、消費税の負担額がかなり変わります。看過しづらい負担になるので、免税事業者との取引を見合わせる課税事業者が多く現れる可能性が高いです。ただし、免税事業者の主要な取引先が簡易課税制度を採用している事業者なら、インボイス制度による影響はほとんどないでしょう。

簡易課税制度とは仕入れの税額計算を簡便的にする計算方法です。売上の税額に対して「みなし仕入率」を乗じて仕入税額を算出します。2020年度の「国税庁統計年報」によると、課税事業者のおよそ35%、個人事業者の課税事業者の約55%が、簡易課税制度を利用しています。

仕入税額控除割合50%終了

第2段階目の経過措置期間は2029年10月1日に終了します。これ以降は免税事業者からの仕入れについての消費税が控除できなくなるので注意してください。そのため、簡易課税制度を選択していない課税事業者を除き、免税事業者である個人事業主と取引を積極的にする事業者は、基本的になくなっていくと考えられます。また、この時期を境に、簡易課税制度を取りやめる課税事業所が増えることも考慮しておくべきでしょう。個人事業主の営む事業内容や経済状況にもよりますが、経過措置期間終了後、免税事業者の取引相手の選択肢は現在よりも減る可能性が非常に高いです。それに伴い、免税事業者の多くは、経営的に不利になっていくでしょう。

現在、免税事業者である個人事業主が適格請求書発行事業者になるなら、2029年までにその手続きを済ませておくことをおすすめします。この時期より登録が後になると取引業者を多数失い経営が成り立たなくなる可能性が高いからです。

個人事業主はインボイス制度に備えて経理業務の負担軽減を図ろう

インボイス制度開始で免税事業者がすぐ経営危機に陥る率は低いです。しかし、経過措置終了の2029年には、取引先を課税事業者に変える事業者が増えるでしょう。課税事業者への変更は税務負担など対策が必要なので、制度開始までにリコーリースの集金代行サービスの導入検討をおすすめします。経理業務を軽減したい個人事業主向けのサービスです。まずはフリーダイヤルもしくはお問い合わせフォームから、お気軽にお問い合せ下さい!

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